遺産分割協議書
遺産分割協議書
被相続人(お亡くなりになられた方)の相続財産に関する分割方法や割合などを相続人全員で決定する書類で、相続手続きを行う際に必要となります。
遺産分割協議書に署名・捺印すべきは、相続人「全員」となります。
捺印につきましては、相続人全員が実印で捺印します。
なお、実印の登録手続きがお済みでない相続人の方は、予め住所地の役所で実印の登録を済ませておくようにしておきましょう。
ちなみに、本人の住所がある役所へ、本人が顔写真付き身分証明書と登録したい印鑑を持参すれば、原則、即日で印鑑登録が完了します。
遺産分割協議書への捺印は、相続人全員でというところが重要なポイントになり、遺産分割協議書を作成する場面においては相続人の捺印がたった1人でも欠けていた場合には、遺産分割協議書として効力が発揮されません。
但し、例外的に、相続放棄をした相続人などは遺産分割協議書に署名・捺印する必要はありません。後見人が付いている被後見人なども被後見人の署名・捺印は不要です。(被後見人の場合は原則として、後見人が代わりに遺産分割協議に参加し、署名・捺印します。)
遺産分割協議証明書
遺産分割協議書のいわば仲間のような書類に遺産分割協議証明書という書類があります。遺産分割協議書と名称がかなり似ていますが、両者には決定的に異なる点があります。
その決定的な違いとしましては、遺産分割協議書は1枚の協議書に相続人全員の署名・捺印が必要であるのに対し、遺産分割協議証明書はまったく同じ内容のものが複数枚作成され、各遺産分割協議証明書には各相続人の署名・捺印のみがあれば良いとされている点です。
ここで注意すべき点は、遺産分割協議証明書の場合は、あくまでも相続人全員分の証明書がすべて揃って初めて遺産分割協議証明書としての効力を発揮する点です。例えば、相続人が全員で5名いる場合には、遺産分割協議証明書が計5通揃って1セットということです。
(参考)遺産分割協議成立申立書
ちなみに、遺産分割協議成立申立書という書類もあります。
こちらの書類は不動産の相続登記手続きとは直接関係はない書類です。
具体的には、自動車の相続手続きの際に登場してくる書類となり、相続する自動車の価格が100万円以下の場合に、新所有者による簡易的な相続手続きを可能とするための書類となります。
新所有者となる相続人1名の署名・捺印のみで良いとされており、この点は遺産分割協議書や遺産分割協議証明書とはまったく異なる点だといえます。
遺産分割協議書の内容
遺産分割協議書の内容は、一般的に下記のような順番で構成されております。
① 被相続人の氏名、死亡日、最後の本籍地・住所地などの情報
② 個別具体的な協議内容
③ 各相続人の署名・捺印(実印)
上記各項目につき、補足説明をしていきます。
①につき、戸籍謄本や住民票の除票などの記載を基にして、正確に記載していく必要があります。
②につき、ここがメインの箇所になります。まさに相続人間の協議で決定した内容の詳細が記載されてくる箇所です。相続人間における協議の結果を忠実に反映させる必要があり、この部分につきましては、唯一の正解があるというわけではありません。だれがなにをどのくらい取得するのかを中心に記載していきます。極端にいえば、相続人全員の間で合意が取れれば、どのような協議内容でも良いということになります。但し、協議書内に記載する文言については慎重に選ぶ必要があります。(例 相続と遺贈の使い分け、代償金の支払いなど)
③につき、相続人全員が必ず実印で捺印します。さらに、あわせて印鑑証明書も添付します。なお、この印鑑証明書には期限はありませんが、現住所と一致している必要があります。
司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼した場合には、②の協議内容についてのアドバイスを受けることもできますので、依頼するメリットは大きいといえます。
遺産分割協議書 作成時のポイント
遺産分割協議書を作成する際に、ぜひこれらの点は覚えておいていただきたいです。
☑ 不動産の表示は登記簿上の記載通りにきちんと記載する
登記事項証明書(全部事項証明書)の記載通りに記載すれば間違いないです。
たまに権利証を見て、その情報を書いてしまう方がいらっしゃいますが、権利証に記載されている情報が古い場合もありますので、現在の情報と異なるケースがありますので、気を付けましょう。
土地であれば地番、家屋(建物)であれば家屋番号は正確に記載し、さらに、建物の所在は「○番○」ではなく「○番地○」と記載するのが正しいです。
不動産の表示に誤りや不足がある場合、最悪、相続登記申請手続きにも使用できないなんてことにもなりかねないので、そうならないように遺産分割協議書を作成する際にはご注意ください。
☑ 不動産に漏れがないようにする
自宅だけなので、簡単だと思い込んでいたら、自宅の前面は私道であり、そこにも共有持分があったなんてことがあります。
また、家が建っている土地とは少し離れた場所に共有持分を有している土地(私道など)があったなんてパターンもあります。
私道部分の土地は、通常固定資産税が非課税となっており、納税通知書(課税明細書)に載ってきませんので、名寄帳や権利証などで確認しておく必要があります。
必ずしも「自宅の土地=1筆」とは限りませんので、念のためチェックしておきましょう。
特に、区分マンションの場合ですと、敷地権と呼ばれる、共有状態の土地が複数あることも多いですので、それらをきちんと記載しておきましょう。
被相続人が所有する不動産を探すときには、名寄帳、登記済権利証、売買契約書、申告書の控えなど様々な書類からそのヒントを発見することができますので、相続登記手続きのタイミングでは注意しておきたいところです。
不動産の記載の仕方については、一部の相続人が相続すると決まっている場合には、「被相続人が有するすべての不動産」、「被相続人が有する一切の財産」などと包括的に記載する方法もあります。
遺産分割協議書と遺言書
被相続人(お亡くなりになられた方)が遺言書を残していた場合には、まずその遺言書が法的に有効かどうかを確認する必要があります。
遺言書があるからといって、その遺言書が利用できるとは限らないのです。
遺言書が無効である場合には、その遺言書は効力がありません。
結論としましては、法的に有効な遺言書が存在している場合には、原則として、遺産分割協議を行う必要がなくなります。
遺言書が法的に無効となった場合、当該遺言書の効力は認められず、いわば遺言書がないのと等しい状態になり、相続人間での遺産分割協議により相続手続きを進めていくことになります。
自筆証書遺言や秘密証書遺言などの場合には、必ず管轄家庭裁判所で検認という手続きを事前に済ませてからでないと、遺言書として相続手続きに利用することができません。
また、検認の手続きを経たとしても、当該遺言書を相続登記申請の添付書類として使用できるかどうかは別問題になります。
検認の手続きを経た自筆証書遺言書の内容に不備があり、その内容では相続登記申請を進めることができないといったこともあり得ますので、その場合には相続人間での遺産分割協議に切り替えて対応する必要が出てきます。
遺言書が複数出てきた場合には、どの遺言書が最新のもの(日付が新しいもの)なのかどうかも重要なポイントになります。
公正証書遺言書だから自筆証書遺言書に優先するなんてルールはありませんのでその点もご注意ください。
これはどうなんだろうと気になるケースは、迷わず専門家へご相談ください。
現物分割
こちらは被相続人の遺産を物理的に相続人間で分ける方法です。
遺産をナイフで相続人ごとにカットしていくようなイメージです。
実家の土地と建物は妻、その他の現金や預貯金は長男のように財産ごと相続人ごとにシンプルに遺産を分けていくわけです。
この場合は遺産分割協議書の記載すべき文言もシンプルになりやすいです。
但し、被相続人の遺産が不動産に偏っている場合や特定の相続人のこだわりが強い場合など、状況によってはうまく分けることが困難なケースもあります。
代償分割・代償金
遺産分割協議書のなかで、代償金の支払いについて記載されることがあります。
相続人が複数名おり、うまく遺産分割することが難しい場合などに利用されます。
とある相続人が遺産を受け取る代わりに、他の相続人へは金銭を支払うのです。
これを代償分割と呼びます。
この際の相続人間における金銭いわゆる代償金の支払いは遺産分割の一環として行われるため、通常は贈与税がかかりません。
しかし、遺産分割協議書に代償金としての支払いだということについて何も言及がない場合や記載の仕方が紛らわしい場合などは、果たして代償分割として金銭が支払われたかどうかが証明しずらくなってしまいます。
後日、贈与税がかかってしまったなんてことのないように、きちんと遺産分割協議書へ記載をしておくようにしましょう。
換価分割
被相続人の遺産のほとんどが不動産や株式のみである場合などに用いられるのが換価分割です。
遺産となる不動産や株式を売却し、その売却代金を相続人間で分けるような方法です。
こちらもその分割方法について遺産分割協議書へ記載が必要になってきます。
換価分割の方法を採る際にはその後の売却手続きをスムーズに進めていけるように、便宜相続人の代表者の名義にしておくこともあります。
相続人全員の名義にすると、売却手続きの際にも相続人全員の協力が必要になりますので、予めどちらの方法にするのか話し合っておくとよいでしょう。
また、換価分割後の売却代金を相続税の納税資金に充てようとする場合、納付期限に間に合うように急いで売却手続きを進める必要がありますので、本来受け取ることのできたであろう金額よりも少ない金額で売却してしまうというリスクもあります。
相続した不動産をすぐに売却する予定がある方はぜひお気軽にご相談ください。
遺産分割協議と相続放棄
家庭裁判所へ相続放棄の申述をした相続人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
相続人ではなくなるため、プラスの財産とマイナスの財産どちらも相続することはありません。
その結果、遺産分割協議に参加できる資格もなくなり、遺産分割協議書に署名・捺印することもなくなります。
なお、相続登記の申請の場面においては、相続放棄をした相続人におかれましては相続放棄申述受理証明書などを求められますので、慌てないように前もって準備しておくと良いでしょう。
後見人等
相続人のなかに認知症などで法律行為(遺産分割協議)ができない状態の相続人がいる場合には、そのままの状態では遺産分割協議を進めることができません。
なぜなら、意思能力のない者はそもそも遺産分割協議を行うことができないとされているためです。
意思能力のない者が参加して完成した遺産分割協議書は、相続人全員の実印があっても、法律的には無効です。
形式的には有効に見えても、実質的には無効ですので、注意しましょう。
この場合、速やかに家庭裁判所へ後見人等の選任申立ての手続きを取ることで解決を図ることが可能です。
その後、後見人が無事に選任されると、後見人が正式な法定代理人として被後見人である相続人に代わって遺産分割協議を行うことができます。
わかりやすく後見人の例を出しましたが、ご本人の状態によっては保佐人や補助人が選任されるケースもあり得ます。
遺産分割協議がまとまらない場合(遺産分割調停、審判)
相続人同士で遺産分割協議をしたが、それぞれの主張や考えに相違があり、一向に話がまとまらないというケースもあるかと思います。
そのような場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることができます。
但し、遺産分割調停は遺産分割協議ができないまたは著しく困難である場合における最終手段と捉えてください。
調停手続きにかかる時間や労力を考えると、相続人同士で解決してしまうほうがはるかに賢明です。
遺産分割調停とは、当事者に加え、裁判官や調停委員という第三者を交えて、合意に向けて、話し合いを進めていく手続きとなります。
何度も期日を設け、段階的に確認と話し合いを重ねていきますので、非常に時間がかかります。
最終的に、相続人の全員が合意に至れば、当該合意内容に基づき調停調書という書類が作られます。
こうして出来上がった調停証書は確定判決と同じ効力を持つことになります。
もちろん調停調書を各種相続手続きに使用することができます。
もし調停が不成立となってしまった場合には、審判手続きに移行するため、相続人等の意見や考えは反映されにくくなってしまいます。
なお、司法書士は遺産分割調停の申し立て書類の作成は可能ですが、遺産分割調停において相続人の代理人となって代わりに主張をすることはできません。
報酬(遺産分割協議書・遺産分割協議証明書の作成)
| 報酬 | 33,000円~(税込み) |
※記載内容や納期により報酬額は変動いたします。
参考: 相続登記